旧大滝村は埼玉県の面積の1割を占め、その殆どが山林です。
地権者も多岐にわたっており、国、県、市、宗教法人、学校法人、公社、組合、個人、その他が有るようです。
山の中で生きる糧を得なければならない訳ですので、多くの問題も生じる事になります。
その為、尾根と云う尾根の殆どに地権者の印となる物が残されている訳ですが、それらは吃驚するような奥地まで伸びています。
林野庁の境界見出標だが、この形式は現在使われていない
東京営林局の境界見出標
秩父営林署の境界見出標
現在は営林署ではなく森林管理事務所
埼玉県標・埼玉県は殆どがこの形式
11日のコースの隣尾根はこの県標
東京大学の境界見出標
立ち木に釘で固定する見出標は古いタイプ
栃本集落、白泰山、十文字峠、そして中津川集落を巡る山域に、50台のカメラ設置をしてオオカミの姿を追っているのですが、余りにも範囲が広すぎて、オオカミというより餌となる動物たちを追っているのが現状かも知れません。
1つの尾根筋に約5台、それを10ヶ所、3ヶ月に1回の割で巡回していますが、2回分を1日で済まそうと考え、6月11日(土)、朝3時自宅発で山に向かい6時から歩き始めました。
最初の2時間は一般登山道を辿りましたが、白泰山を越え中津川への杣道の中間部分は、私にとって未知のルートでした。
登山記録を見ても全て尾根を避けてのルートが記され、果たして尾根通しで行けるのか不安な気持ちも有ったのです。
歩いて見ると“案ずるより産むは易し”で、写真に在る様な地権者の丸杭が途切れる事無く続いているのが判りました。
どんな尾根筋でも普通に見られる丸杭・
山と記された杭は森林管理事務所
新設したカメラ・絶好のロケーション
行程中のカメラ14台全ての作業を終え、時間の確認をすると13時18分でしたので、頑張れば14時12分発のバスに乗れる筈と気合いを入れたその時、非常に大事な物を忘れた事に気付きました。
お金を持って来て無かったのです。
モチベーションの下がった私は、中津川集落から栃本の登山口に有る車までどうやったら帰れるか・・・それだけを考えながら下りました。
助けを求めようとした知人二名は共に不在、バスは出て行ってしまったし・・・で、窮余の一策、交番に駆け込みました。
交番には駐在さんともう一人の方が居て話に夢中でしたが、駐在さんが声を掛けて来ましたので一部始終を話しましたら、もう一人の方が私を栃本まで送ってくれると言って来たのです。
その方は二ホンオオカミに興味を持っていた非番の警察官で、三峰博物館の毛皮等の標本を家族で見物に来た事のある、管轄外、小鹿野警察に25年間勤務している方でした。
渡りに船とは正にこの事。
人の情けに触れた山行となり、全ての杞憂を一瞬に吹き飛ばし充実した一日となった次第です。
その反動では無いのでしょうが、帰宅後持ち帰ったSDカード14枚の分析中、困ったショットが2つ混じっていました。
本年3月6日のこの欄「タテガミ状の黒い長毛」で紹介した、同じ形態の鹿が映されていたのです。
3月6日欄の鹿は牝でしたが、今回は牡。
この個体が勢力を得て繁殖活動をしたならば・・・と。
この牡は角から推測すると若い個体
鹿のしっかりした勉強をしている訳では無く、万の数を遥かにしのぐ鹿のショットからの、自分なりの判断で申しているだけなのですが、2011年3月11日の福島の原発の悪影響でなければ良いのだが・・・・と願うばかりです。
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先月14日の「慌ただしい連休の後」欄で紹介しましたが、敬愛する登山ガイド「高桑信一」氏の名文「ニホンオオカミがもたらす夢」が『雑誌「渓流」(釣り人社刊)』から発売されています。
渓流 2016 夏 (別冊つり人 Vol. 423)の表紙
文中の2~3行を紹介しますと【やがて梢を透かして昇った月を眺めながら、そろそろ寝るかと話し合っていたそのとき、森の彼方から忽然と咆吼が湧いた。ビロードの光沢の夜空に浮かんだ、ミルク色に輝く月に向かって吼えるがごとき波動であった。】・・・・と、惚れ惚れする描写です。
使用されている写真とキャプションは私が担当しました。皆さん是非ともご覧ください。
現在私の下に、複数の出版社から打診が来ていますが、高桑さんのゲラ原稿に目を通した20日前から自信を失ってしまい、とても出版社の意向に沿う気持ちにはなれない状態です。