「野生動物の糞」を書きながら「のろし」を書かないと・・・と思いまして・・・糞の3連荘です。
1997年12月に青木書店から発売された【烽(とぶひ)の道】と言う書物をご存知でしょうか。
サブタイトルが古代国家の通信システムとなっています。
烽火(とぶひ)の道
書籍の一部に、「のろし」は古代奈良時代の昔から軍事的通信手段として用いられており、江戸末期ペリーの黒船が浦賀に来航した際も、紀州藩でも黒船来襲に備え、「のろし」で危急を知らせる態勢を整えた・・・と記しています。
ご承知の様にのろしを漢字にすると「狼煙」「烽火」となります。
大家で保存していた古文書の内容に、黒船対策として紀州藩内では、延べ94人が計24kgの狼糞を集めてのろし場へ送った、とも記されています。
何故狼糞なのかと云いますと、狼糞をかわかして、生木の中へ加えて焚くと、その煙はどんな烈風にも横や斜めにならないで、真直ぐ上へあがると言うのです。
「のろし」は煙が真直ぐ高く濃く昇る事が最重要視されますので、現代の様な通信手段を持たない昔の人にとって、オオカミの毛糞は大切だったのです
「野生のオオカミ、野犬の糞は、荒い毛の固まり状である。オオカミの糞には白い骨粒が混じり、野犬のものは荒い粉片が混じる。
オオカミはその鋭い丈夫な牙や歯で、獲物を皮から骨までむさぼり食べ、その糞には餌動物の毛や羽根や骨片が混じるので、俗に毛糞と言った」とも記されています。
JR山陽新幹線の新尾道駅の開業を記念して、1988年3月「新幹線」と「のろし」の競争を試みた事が有り,起点新大阪から尾道までの250kmを、ほぼ10km間隔で繋いだ「のろし」は新幹線に10分遅れたのですが、終盤モヤって確認に手間取った為だそうです。
私もこの本を読んで「のろし」の伝達速度の速さに驚きましたが、最大の弱点は雨等の荒天だったのでしょう。
10年前になりますが、紀伊半島の標本調査で奈良、和歌山県下を廻った事が有ります。
奈良県大淀町の岸田家頭骨調査から始まり
岸田家所蔵の頭骨
上北山村西原の新谷家、
新谷家所蔵・山棲み犬の根付け標本
和歌山県旧本宮町の戎家、
戎家所蔵の根付け標本・私が数多手に取った根付けで俊逸の標本
すさみ町の楠本家、
楠本家所蔵上顎裂肉歯穿孔加工品・何とか入手出来ないかと願った標本
旧大塔村の村立資料館
旧大塔村立資料館蔵・上下顎骨吻端部
旧大塔村立資料館蔵・根付け標本
等でした。
上北山村の新谷家に伺った際、根付標本の他に「珍らしい物」との触れ込みでオオカミの毛糞を見せて戴きました。
新谷家に伝わるオオカミのフンと入れ物
新谷家に伝わるオオカミのフン
毛の感じからするとイノシシを食べたのでは無いかと思われますが、上記の文面から推し量ると、新谷家としては大切にすべき物だったのだと思います。
当ブログ前ページで提示した(野生動物の糞)和歌山県の西田氏から送られて来た毛糞。
和歌山県在住西田氏採集の毛糞
江戸の昔だったら紀州藩からお買い上げされていたのかも知れません。