7月中旬、中津川林道の通行解除がなされてからの1ヶ月間、都合7箇所のカメラメンテナンスを行いましたが、全て早朝からの入山となりました。
勿論暑さ対策が主たる目的なのですが、深夜の林道走行・早朝入山は野生動物との遭遇機会ともなっています。
そして彼らが、生きる事に必死であるのを知らされる事にも繋がるのです。
玄関前で気温を計測すると・・・
肉食動物の食痕
肉食動物の食痕
沢筋でのメンテナンスは一服の清涼感を得るものでも有りますが、尾根筋の作業は時間にも依りますが、かなり厳しい感じになります。
生産に全く繋がらない厳しい山歩きを、誰に頼まれた訳でもないのに長年続けるのは、時にはとてもしんどいのですが、もうすぐ大願成就が・・・と思うと自然に足が山に向かいます。
むかーし・・・満足に食べれなかった子供の頃、「人間は食べる為に生きるのか、生きる為に食べるのか・・・」そんな事を真剣に考えたものでした。
人間に限らずこの世の全ての動物達は「生きる為に食べる」のですが、野生動物達は、行動の殆ど全てを食べる為に費やしています。
生殖活動の或る時期を除いて・・・ですが。
餌をめぐって狐と狸の争うショット
餌をめぐって樹の上に追いやられた狸
山から持ち帰ったSDカードの分析をしていたある日、沢の中で水に浸かりながら動かない鹿の集団が目に留まりました。
当該のカメラに温度表示の機能が無いので、近くのカメラで温度を確認すると25~26度Cを示していました。
8月3日AM7:00、標高1.200mの森林中に設置したカメラが示した温度です。
鹿がカメラの前に現れたのがAM5:30、集団が去ったのがAm7:12ですから100分もの間、沢の水で体を冷やしていたのです。
この現場での定点観測は5年となりますが、初めての事でした。
カメラは8月3日AM5:31分を表示
最後の鹿が離れるのが7:12分
20年ほど昔、秩父山中の猟師からオオカミ情報を聴き歩いていた時、鹿狩りの話を聞いた事が有ります。
尾根筋でイヌを放して鹿を追い落す猟ですが、追われた鹿は沢に入って熱くなった身体を冷やすので、そこで待っている・・・。
多分、そんな状況に似た景色だったのだと思いますが、とすると、私たち人間が感じる以上に野生動物も厳しい暑さなのでしょう。
鹿がそんな様子でしたからクマは一体どんな感じかな・・・と、SDカードを端折って見ますと、鹿が熱けりゃクマとて同じ。
水浴びをしているクマの姿がバッチリ撮れていました。
鹿は脚だけ冷やした状態ですが、クマは全身浴で見事な姿態を曝け出していました。
私たちは広大な奥秩父山中の極々一部で観察を続けている訳ですが、野生動物達は深山のいたる所で、同様な暑さ除けをしているのでしょう。
全身浴で見事な姿態を曝け出したクマ
処で今回の現場で、クマに依るカメラ破損がマタマタ発生しました。
この2年間で5台目の破損です。
最初は「クマの領域にカメラを設置しているのだから・・・」と寛大な気持ちで居ました。
寒暖・風雨に依るカメラ破損なら想定内ですが、クマに依る破損・・・それも5台目ともなると気持ちが消沈します。
地権者の許可を得てカメラ設置をしているのですが、良く考えると、クマを始めとする野生動物が本来の地権者の筈ですから、思い切ってこの現場を諦める事にしました。
カメラの取り付け金具だけ残して
右端・樹で背中をこするクマがカメラを
遅れに遅れている山根一眞さんのオオカミ本出版の件ですが、先日1年振りに連絡いたしました。
大英自然史博の標本を前に山根さん
【電話、大変ありがとうございました。
ニホンオオカミの情報、新しい発見が続いているのはニホンオオカミに対する関心が相変わらず大きいことを物語っていますね。
最新情報も続々のようで、今月末にでもお訪ねさせていただきたいと思っております。
あらためてご連絡をいたします。
オオカミ本の執筆、遅れてしまっていて身の縮む思いです。
山根一眞・動物事件簿を製本した人も・・・
周囲からも厳しく言われておりますが、年縞博物館やら福井国体やらえらい日々に入ってしまいましたが、この夏に何とか進めなくてはと思っております。
ちなみに、福井県年縞博物館の隣は若狭町立縄文博物館ですが、ここは日本最大級と言われる近くの鳥浜貝塚から出土した縄文遺物が並んでいます。
オオカミとイヌの頭骨も出土しており、数年前にオオカミ展をしていたそうです。
その頭骨は別の博物館にありますが、いろいろと縁があるものですね。
(中略)
梓山犬を飼うことになったなんて、羨ましいかぎりです。
次回お伺いした時に、会いたいです。】
かいつまんで説明しますと、≪予定は未定にして決定に非ず≫の諺通り、福井県年縞博物館の立ち上げに関わったり、福井国体開催の重要な役割を負っていて、執筆がはかどらない…と云う事らしいのです。
公の行事を優先するべきですし、急いで不味い内容になるより納得できるものを作らないと・・・とも思います。
近々お会いして打ち合わせをする様になっていますので、改めてお知らせします。
山根さんが特別館長を務める年縞博物館