毎日の様に、多方面から様々なメールが届きます。
パソコンと縁が無かった頃、得られる情報の全ては足で稼いでいましたので、現在の情報収集は夢の様とも云えます。
そうした中、こんなメールが3枚の写真と共に届きましたので、先ずはご覧下さい。
A-【初めまして、富山県富山市在住の松元と申します。
先日撮影した動物の死骸が、もしかしたらニホンオオカミなんじゃないかという疑問から、こちらの「ニホンオオカミを探す会」さんに辿り着きました。
撮影した写真を添付させて頂きます。
車に轢かれたのか、目が飛び出しています。
お見苦しい写真で大変申し訳ありませんが、敢えて加工はしていません。
9月5日(水)に富山県xx市の市道を車で通過中に動物の死骸を見掛けました。
初めは皮膚の色や毛の感じから猪(土地柄出ても珍しくはないもので…)かと思ったのですが、姿は猪ではありませんでした。
野犬か?でも犬ともまた違うような…。
ひとまず写真を撮影してその場を後にし、用を足して再度戻った時には既に死骸は無くなっていました。
この動物はなんだろう?形から犬だとは思うけれど…モヤモヤしながらネットで調べるとニホンオオカミに行き着きました。
「ニホンオオカミ」で検索すると出てくる子達とは毛色や毛質が違うと思いましたが、更に調べると出てきた「高知県大月町で捕獲された仔オオカミ」(添付写真あり)にとても似ていると感じました。
秩父の民家に保存されていた毛皮
富山県から届いた動物の死骸
高知県大月町で捕獲された動物
正直、こちらの写真だけでは細部まで写っていませんし、ご覧頂いても判別はつかないのかもしれません。
「こりゃ犬ですね!」で終わるかもしれませんし、それならそれでスッキリします。
不躾なご連絡で大変申し訳ありませんが、お時間の許す時にでも見て頂ければ幸いです。
よろしくお願い致します。 松元xx】
Q-【松元 さま
ご連絡頂き有り難うございます。
写真拝見致しました。
分かり易く説明するため、送付頂いた写真とニホンオオカミ標本との、それぞれの部分を切り取りまして比較します。
写真Aはニホンオオカミの前肢です。ご覧の様に黒い斑―黒斑と云いますーが有ります。
写真Bはニホンオオカミの尾です。―尾端に房を得ずーとされる形状です。
写真Cはニホンオオカミの上下犬歯です。
写真Dはイヌの上下犬歯です。
写真Eがお送りいただいた動物の上下犬歯の拡大です。
写真A/ニホンオオカミの前肢
写真B/ニホンオオカミの尾
写真C/ニホンオオカミの上下犬歯
写真D/イヌの上下犬歯
写真E/死骸動物の上下犬歯
ニホンオオカミの「黒斑」も「尾端に房を得ず」も、外部形態の一部の特徴ですが、半別の為の大きな観点です。
送付戴いた写真にはその判別点が見られない様に思います。
ベルリン博物館蔵の毛皮
科学博物館蔵の剥製
歯での識別は犬歯より裂肉歯(奥の方の歯)の方が重要ですが、送付写真では識別不能ですので犬歯での判別としました。
送付写真の動物の犬歯は、ニホンオオカミの頑丈な犬歯とは大きな違いが見受けられます。
ニホンオオカミの裂肉歯
その他、体高・体長等も識別の際重要ですが、今回の場合写真1/2/3の点だけで、ニホンオオカミでは無いと云えます。
写真のプロフィールから考えると、残念ながらイヌだと思われます。
ニホンオオカミの模式標本
今回はこうした結果になりましたが、また何か情報が有りましたら宜しくお願い致します。
尚、この度戴いた情報を、私が運営するブログーニホンオオカミを探す会・井戸端会議―にて使用させて戴きたいと考えて居ります。
勿論、固有名詞の提示は致しませんので、宜しくご理解の程お願い致します。 2018.09.11. 八木 博】
A-【お忙しい所、ご丁寧な返信を下さり有り難うございます。
拝見させて頂きました。
犬のようですね…。
主人と二人モヤモヤしておりましたので、お陰様ですっきりしました。
ブログへの使用も承知致しました。
ニホンオオカミの発見・会の発展を心より願っております。
この度は誠に有り難うございました。 2018.09.12. 松元xx】
国内外に散在するニホンオオカミの標本ですが、私の知る限り「富山県産」とされるものは確認されていません。
メールを一読し「若しかしたら富山県最初のニホンオオカミが・・・」とも脳裏に浮かびましたが、そう上手く事は運びませんでした。
今回の事例は、情報提供者の適切な扱いで、真贋を判断するべく写真添付も有りましたので、速やかな対応が可能でした。
「見た・聴いた」より、「撮った・録った」情報が一層重要で、1996年の「秩父野犬」撮影が一つの物差しになったのは、皆さんご承知の通りです。
そして現在「秩父野犬」19枚のスチル写真より、動く映像の方がより多くの情報が得られると考え、山中にトレイルカメラを設置している訳です。
「動く映像の中で咆哮を発したならそれで決まり」とも思い、老体に鞭打って山に向かうのです。
富山からの情報と前後して、紀伊半島の方からも電話を戴き、その後写真が送付されて来ました。
【未だ、赤ちゃんで、皮膚病を患い、眼も少し腫れているようでした。】の文言からして、疥癬病に罹った「タヌキ」の幼獣を連想しましたが、写真を確認するまで迂闊な事は云えません。
送られて来た数枚の写真を確認後、私は以下の文面を送付致しました。
Q-【xx さま
写真の送付有り難うございます。
拡大し一枚一枚吟味致しました。
が、どうも、疥癬病に罹った「タヌキ」の様に見受けられます。
実は、同様の写真が数年前から私の下に何件も届いて居ます。
過去に届いた写真と比較すると、ご納得行くと思います。
数点送付いたしますので御覧下さい。
3枚目は疥癬病にかかり無毛となったイヌの写真です。
今回は期待に沿えない結果となりましたが、今後共宜しくお願い致します。】
紀伊半島から届いた写真
過去に届いた写真
疥癬病にかかり無毛のイヌ
疥癬病に罹ったと思われる動物をニホンオオカミでは・・・?とする情報は、20年以上前から私の下に届いて居ます。
それ以前にも、三重県の秘宝館なる場所で「二ホンオオカミ」として展示されていた事もあります。
そもそも、学術的なニホンオオカミの研究は、最後の標本(?)が捕獲された明治38年の四半世紀後から始まっている訳で、謎だらけの状態が続いているのが現状です。
こうした問題を解決する為にも、情報の積み重ねと、生存の確認が必要なのです。