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Channel: ニホンオオカミを探す会の井戸端会議
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山村民俗の会-2

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相模原市の佐藤芝明さんから手紙が届いたのは1995年9月の末でした。
佐藤氏は日本山岳会、山村民俗の会等に名を連ね、山の神関係の著書も数冊記しています。
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佐藤芝明著 山の神の民俗と信仰
手紙に同封されていた日本山岳会の会報“東西南北”には、「魚沼駒ケ岳とオオカミ」と題して、佐藤氏の小文も載っていました。
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日本山岳会会報「東西南北」
魚沼(越後)駒ケ岳は私の故郷の山であり、信濃川の支流魚野川からの眺めはもう絵のごとく、極端な話、家から一歩外に出ると駒ケ岳がついて来るという感じです。
ピラミダルに整った三角形の山容は、隣の中の岳に高さで少々遅れをとっても、魚沼三山中(八海山、中の岳、駒ケ岳)は言うに及ばず、近辺の山々を圧倒しています。
高校に入学してから、山岳部に入部した私にとって、駒ケ岳は活動のほとんどだったと言えるかも知れないのです。
小遣い銭も不自由だった昭和40年代の初め、大湯温泉までのバス賃とその日の食糧だけで親しめる山。
それが魚沼(越後)駒ケ岳でした。
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坂西徹朗作 越後駒ケ岳
それは兎も角として、佐藤氏の体験は次の様に記述されています。
『1994年8月7日、越後の名山駒ケ岳に登った。駒の背を思わせる山頂は展望が良い。
帰路は小倉山、道行山、明神山、枝折峠へと猛暑の尾根を断食行者のようにフワフワと歩いていた。
道行山の先で右手(骨投沢)に下る古道を発見した。
この先に少しばかり日影があり、沢から吹き上げる微風に涼をとっていると下の沢筋から突然「ウォー」という吠え声が聞こえて来た。
直感でオオカミだと確信した。
理由は猟期でないこと、銀山平に犬が見当たらないこと、一般人の立ち入り出来ない沢の上部など。
魚沼山域、只見にはオオカミが生息していると確信している。
記述が長くなるが、近辺の山域のオオカミ関連として、1990年8月、山の神の調査で大白川の五味沢に入り、浅草岳から只見町の奥地、入叶津に下り、民家に泊まったことがある。
尺三寸という岩魚の塩焼きを特注して宿の主人(佐藤泉氏)と飲んでいた時に、ワナによる猟の話が持ち上がった。
30年近く毎年数十頭の四つ足動物を捕るという。
昭和50年代まで冬山でオオカミの吠え声を聞いたと言う.
・・・・この話を聞いたときから「オオカミの生息の確信」を持ち続けている。
さて(骨投沢)の由来を独断で書くと、狩人は獲物をこの尾根で解体し、毛皮と肉をとった残りを山の神の使いであるオオカミに投げ与えたところからきたものか。
または、昔銀山平に働いた人達が事故や病気などで死亡したときに、遺骨を銀搬出の道を経て故郷に送る途中で、この沢に投げ捨てたことからきたものであろうか・・・・。』 
そして以下の文章で終わっています。
『今回の駒ケ岳登山は・・・、魚沼オオカミの生息をさらに確信する吠え声を耳にできたことは有意義であった。』
私が足繁く駒ケ岳に通っていた頃は、御多分にもれずニホンオオカミの生存云々等には一切おかまいなしで、登山道に獣のフンがあっても、全く感心を寄せずに通り過ぎるのが常でした。
ちなみに魚沼地方のオオカミに関する文献を探ってみても、昭和2年2月に、南魚沼郡塩沢町の猟師が北魚沼郡湯之谷村の山中で、三頭のうちオス一頭を射殺した一件がある位なのです。 
佐藤氏の依頼でもあった骨投沢の名の由来を聞くべく、高校山岳部の後輩であり、北魚沼郡で父親の跡を継いで現在土建会社の経営をしている三友泰彦君に電話をしました。
・・・「オイ、マメ(元気)だか?」・・・・「はい、何とか」で始まるいつもの他愛ない会話が終わると、銀山の骨投沢の一件を聞いてみました。
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矢印が骨投沢
骨投沢の名の由来は佐藤さんの想像した通り、昔銀山平で働いて死亡した人の骨を、急な山道の為心ならずも投げ捨てた・・・と言う返事が返って来ました。
奥只見方面のトンネル、道路等の工事に深く関わっている三友君ですので、山の動物、特にニホンオオカミの事について、佐藤さんの骨投沢の遠吠えの件のついでに聞いてみました。 
 二週間位経ったでしょうか、フト思い出して三友君の所に電話をしてみました。
今回は前回からそれほど経過していない連絡なので“オイ、ナジデェ”である。(どうしていますか?位の意味)
この前の電話の返事を聞くと、思いもかけない言葉が返ってきた。
“あのソー、狼がいるかいないかどころの騒ぎじゃなくて喰ったら旨かったとの!”と言う話。
・・・“何、なんだその話は“・・・そのとき私の受話器を持つ手は震えていた。  
【オオカミを撃って喰った越後の人】の話は、骨投沢の由来から始まったのです。

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