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Channel: ニホンオオカミを探す会の井戸端会議
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かわうそセンセ・町田 吉彦-2

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199432021日。
奈良県のナチュラリスト達が同県東吉野村で、二ホンオオカミフォーラムを開きました。
メディアに大きく扱われた訳では無かったのですが、全国紙の社会面に小さく『二ホンオオカミの剥製新発見?』として掲載され、「ニホンオオカミフォーラム」を行うと記されていたので、急いで問い合わせをし参加しました。
100名位の参加者が狭い部屋に詰め込まれ、そうした意味で熱気溢れる会場となったのですが、会の中身はサメザメした空気が流れていました。
二ホンオオカミは「紀伊半島の3大幻獣」としての位置づけで、イヌワシ・ニホンカワウソがそれに含まれ、サツキマス・ルーミスシジミ・オコジョ・岩魚・ヤマメの生息例まで披露された、費用対効果の悪さが目立った会となっていました。

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イヌだった剥製

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1994年フォーラムの式次第

そもそも主催者は知識が貧困で、フォーラムで何を為すか!と言うよりメディアに取り上げて貰い、名を挙げたい…そんな気持ちがありありの人でした。
 
何かが行われる時、そこには様々な思惑を持った人が集まります。
関東圏からも十指に余る人達が、大きなエネルギーを払って奈良まで足を運びました。
博物館の研究者、学者の卵、そして単なるマニア。
食事を兼ねたその夜の交流会、単なるマニアで同じ志を持つ者が、近未来での再会を約束し、その後の「探す会」の礎になったのです。
その中の一人に栃木県那須市在住の長岡郁生氏が居りました。

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20年前の長岡郁生氏
 
長岡氏は絶滅論者ですが、声を掛ければ会合に那須から車を走らせ、見つからなかった事に安堵する変わった研究者でした。
京都から50ccバイクで3日かけて駆け付ける岡田氏と共に、3人で一晩中火を囲み酒を飲みながらするオオカミ談義は至福そのもの。
最初大勢の仲間がキャンプを囲んでいるのですが、一人減り二人減りして、夜が明けた時には何時もこの3人が残ったのです。
 
そんなオオカミ談義の時だったと思います。
長岡氏から「ニホンカワウソ」の生存に関し、重要な証拠を持っていると1枚の写真を見せられました。
軽自動車で日本中何処にでも出かける氏は、198812月末、紀伊半島の或る林道にニホンオオカミ絶滅確認の為車を走らせ、偶然その写真を撮った訳です。
当時の私は二ホンカワウソに関し全く未知で、私淑していた今泉吉典博士に写真の所見を伺いました。

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今泉先生の追悼抄

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今泉先生からの書簡

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ニホンオオカミの神経孔

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神経孔のスケッチ

博士はカワウソの前足、後足である事を肯定し、その後吉行瑞子博士も同様の所見を述べられました。
 
その20年後になりましたが、念の為、町田先生にも写真の所見を伺う事に致しました。
 
Y)【書面等を御覧願えればと存じます。
私が私淑しています(いました)今泉、吉行両先生も二ホンカワウソの研究者である事はご承知の通りです。
両先生とも写真をニホンカワウソの足跡と認知されましたが、これは19881220日に紀伊半島の山中で研究仲間が撮影した物です。
数年前のカワウソ絶滅宣言に、今泉先生が存命でしたら、心中如何ばかりかと思う次第です。】
 
) 【昨日,論文のコピーと今泉博士の手紙のコピーを受け取りました。
ありがとう御座います。
この足跡の写真は未公表なのでしょうか? 
前後の足跡があるきわめて貴重な写真だと思います。
取り急ぎ御礼まで。】

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ニホンカワウソの足跡写真
 
そしてこんなやり取りを続けました、。
 
Y【昨年618日、奥秩父山中の沢筋で渓流釣りをしていた人たち(3~4人)から、「頭胴長1m位、全身黒毛だったが、胸周辺は白い、釣りの邪魔をする動物」を見つけた…と、連絡を戴きました。
私の知識の中ではカワウソ以外考えられませんので、カワウソの民間研究者で知人の「熊谷さとし」氏に問い合わせました。
氏はカワウソで有る事を否定しませんでしたが、情報提供者が信用できるかどうかに話が向けられ、前に進む事が出来ませんでした。
幸い私たちがニホンオオカミ探しをしている山域でしたので、その動物が何であるか解れば…とも考えトレイルカメラを10台設置して観察中です。
信じ難い事ですが、6/18の夜キャンプ中に、オオカミと思われる動物がキャンプサイト5mに現れたとも言っているのです。(詳細は当ブログ2016.08.12.オオカミが魅入った人に掲載)
山中のカメラでニホンオオカミらしきイヌ科動物を撮れても、生存の証明に漕ぎ着けるまで幾多の山を越えなければなりませんが、カワウソならば案外容易いのでは…との思惑も有りますし、奥秩父山中でのカワウソ目撃例が他にもあるのです。
映像として得られた暁には町田先生にお願いすることになるやも知れませんが、その節は宜しくお願い致します。】
 
M【ご連絡ありがとう御座います。お役に立てそうなことがありましたら,いつでもご連絡ください。
奥秩父の情報,大変興味があります。実はカワウソの絶滅宣言が出された時、確か中部地方か関東地方かのマスコミ関係者から電話があり、
秩父の方には居ないのかという電話での質問を受けたことがあります。
「土地の情報に不案内なので,居るとも居ないとも言えない」と対応した覚えがあります。
退職後に得られたこちらのカワウソの情報は驚くほど人家の近くです。
人気のない所に絞っていたのがよくなかったと思います。
現在、高知県レッドデータブックの改訂作業の終盤で、しばらくはこれに集中せねばなりません(委員長兼魚類分科会代表,甲殻類分科会委員です)。
何とか時間を見つけては無人カメラの設置(今、中断中です)を再開するつもりです。】
 
Y)【カワウソの足跡の写真は未発表です。
多くのメディアも欲しがった写真ですが、全て断りました。
今泉吉典・吉行瑞子両先生が認知した写真を、何時か町田先生と接触が叶った暁にお渡ししたいと考えていた次第です。
生存説の論文、講演等で自由にお使い願えればとも思う次第ですが、撮影者が私ではないので、筋として撮影者N氏の了解を得るべきと考えます。】
 
先日、秋山郷調査の件で高桑信一氏と季節料理「ともん」に出向いた際、氏に「イヌ科動物を撮れても、生存の証明に漕ぎ着けるまで幾多の山を越えなければならないが、カワウソならば案外容易いのでは!」と問いかけると、間髪入れずに同意の答えが返って来ました。

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高桑信一氏

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戸門剛(左)さんと秀雄(右)氏
 
毎週山中に足を運びカメラメンテナンスをしている私ですが、全山の笹枯れに比例した状態で、鹿・羚羊の個体数激減が著しい事はこのブログ上で幾度も記している処です。
にも拘らず、本年5月から再び奥秩父山中で鹿の駆除が予定されています。

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424日に見つけた表示

これ以上鹿の個体数が減ると、奥秩父山中でのオオカミの生息が難しくなりますので、早く駆除中止まで漕ぎつけなければ…その為にはカワウソでもオオカミでも良いから、何とか撮影を…と願っている私です

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