*60歳として一区切りが付き、残りの人生をオオカミ三昧で暮らそうと決めた2010年の或る日。
「吉田道昌―野の学舎」なるページに辿りつき、下記の文面に興味を魅かれました。
【公立学校の教職にあったとき、夏休み、僕は中学生たちと吉野地方の山々へよく出かけた。
「つちのこ探検隊」という空想的シナリオだが、子供たちは山の不思議にロマンをかきたてられ、冒険心がふつふつ沸いてくるようであった。
「つちのこ」という伝説の蛇の話と、もう一つは絶滅した実在の二ホンオオカミにまつわる話、キャンプファイアーの火を見つめながらぼくは子どもたちに語った。
ニホンオオカミはいまだ生存しているのではないかと思われるような不思議を、この山系に入っていくつも体験したことがある。
それが子どもたちへの話の種になった。
子どもらはかたずをのんで耳を傾けた。
テントの中でも登山の時も、彼らは探検気分でわくわくしていた。
大峰山脈、大台ケ原、台高山脈などの奈良県、三重県、和歌山県にまたがる紀伊山地は、植物相の多様さ、樹木の繁茂の濃密さは尋常ではない。
そこは日本一の多雨地帯であり、山も渓谷も深く、険しい。
生徒たちと登った弥山谷源流の狼平で野生の匂いを嗅ぎ、台高山脈の明神平の霧の夜には、不思議な動物の鳴き声に取り囲まれた。
生徒たちは山の原始におびえ、畏敬の念を抱いた。】
*ニホンオオカミ終焉の地とされる奈良県東吉野村山域での事で、周辺の山へも足を運び多少の地理感も有るので、早速コメントを発してみました。
鷲家口で捕獲されたオオカミの頭骨
大英自然史博物館所蔵
それが下記2件のやり取りですが、その時は私の脳裏に留め置くだけの事でした。
【H,yagi 2010/02/24 00:11
台高山脈の明神平での体験談をお聞かせ願えませんでしょうか?
埼玉県在住でニホンオオカミの勉強をしています。
michimasa1937 2010/02/2521:22
中学生の登山部の生徒を引率して、東吉野から高見山に登り、台高山脈を縦走しました。
国見山から明神平に下り、そこの草原にテントを張りました。
3張りだったと記憶しています。
夕方からガスが出始めました。
明神平の水場は三重県側の小さな沢を少しばかり下ったところにありました。
日が暮れて辺りは暗くなり、さらに濃霧が立ちこめ、視界がきかなくなりました。
全員テントにお入り雑談していたとき、かなりするどく甲高い声がテントの近くで響きました。
声が大きかったのでみんなはびっくり、鹿のようでもあり、猿のようでもあり、狐のようでもあり、狼の遠吠えのようでもあり、その声が東の沢の方で鳴くかと思えば北に移動し、西に移り、ガスの中をあちこち動きます。
数頭が鳴き交わしているようでもありました。
懐中電灯を持って外に出て照らしましたが濃霧のなか何も見えません。
実に不気味でした。
これほど大胆に人間に近づくのは何だろうか。
鳴き声は、長く引っ張って、最後の方は音程が高く上がりました。】
*幾度も申していますが、情報が1つでは点に過ぎないが、2つになれば線に、3つになれば面になります。
8月下旬からの曇天続きで山行もままならず、眠っていた情報の掘り起こしにうってつけと思い、6年ぶりに下記のコメントを管理人の吉田道昌氏に発しましたら、
予想以上の展開になって来ました。
【H,yagi 2016/09/17 13:28
相変わらず二ホンオオカミの勉強をしている者です。
上記明神平での体験について、私のブログ(二ホンオオカミを探す会・井戸端会議)で紹介させて戴けないかと、再度連絡した次第です。
東吉野村麦谷の猟師新子氏が同地で遭遇したと、直接伺ってもいますので、その関連性も含め掲載したいと考えています。
michimasa1937 2016/09/1810:01
どうぞどうぞ。お使いください。
八木さん、この夢、あきらめられませんね。
私は脚を故障し、もうあの山系に入れないのが残念です。
東吉野村麦谷の猟師新子氏が同地で遭遇したという話を、知りたいです。
どんな話でしょうか。
H,yagi 2016/09/1816:54
実は私、秩父の奥、三峰神社の博物館客員研究員をしています。
御眷属がオオカミとして知られる神社でして、昨年11月東吉野村議会議員8名がお出でになって、新子さんはお亡くなりになった事を知りました。
が、その前に幾度か電話ですが、お話を伺っています。
当時体調を悪くしていて、長時間のお話は無理だったと記憶しています。
「遭遇日時等は不明。地元で“山行きさん”と呼ばれる木材関連の従事者で狩猟も長年行っていた。
最後の二ホンオオカミ捕獲の地鷲家口の奥、東吉野村麦谷(通称オオマタ)地区に住み、明神平から下った遭遇場所ダケ地点も遠くない。
人間を全く意に介さない状況で、目撃者の前を通り過ぎた。
長年猟をし、多くのイヌを見て来た新子さんにしてみたら、あれがオオカミで無かったら、猟で使っていたイヌは何に当たるか・・・と。」
そんな感じのお話だったと思います。
遭遇時期は吉田さんの体験後に間違いないと考えています。
それと、このブログに掲載している写真を数点使用したいのですが、お許し戴けますでしょうか。
michimasa1937 2016/09/19 09:33 写真ですか。どうぞ使ってください。
新子さんの目撃された動物の姿はどんなんでしょうかね。
写真があればいいのですが。
私は、それとよく似た経験をしています。
大峰山脈の釈迦が岳に登る前鬼口から単独行で山に入った時、付かず離れずに百メートルか二百メートルのところをどこまでも登ってくるイヌがいました。
イヌだと思っていたのですが、こんな山奥まで付いてくる飼いイヌがいるとも思えず、夕方になって私はテントを張りましたら、姿を消していました。】
*大峰奥掛道で知られる前鬼周辺はオオカミ体験事例の多いと言われる処ですが、私にとっても点が線になったのでした。
【H,yagi 2016/09/19 12:24
やはりそうでしたか。
吉田さんの、山との関わり方を読んでみて、そうした体験をお持ちだと考えていました。
私のブログ中でも、大峰山中でこんな体験をした方がいます。
-『2007年11月の夜。奈良県吉野から入山し、大峰山脈を単独で南下縦走していた時、迷平(舟ノ垰周辺)のテント場からちょっと南下したところで、幕営中に東面方向から声を聴く。
声は1匹だけだったのだが、吠え声でもなく、遠吠えでもなく、“イヌとは思えず、野性味があって怖く感じた”と云う。
雰囲気的に、他にも仲間がいそうな感じだったと言っていたが、この辺はあくまで感じ方で、何とも云い様が無い。
ちょっと南にはオオカミ本に良く登場する前鬼が近いのだが…体験者は当時岳人編集部に在籍中だった岩城史枝さん。』-
岩城さんの話が吉田さんの体験と重なりますので、前鬼口からの体験の詳細を伺いたいのですが…。 それと、明神平での日時の詳細もお願いできれば…と。
michimasa19372016/09/19 13:56 かなり昔の体験なので記憶はそれぐらいしかありません。
いつごろかというと、前鬼口からの登山は、1990年10月ごろ、明神平は1968年7月25日です。
釈迦岳のイヌのような動物は、中型犬ほどで、色が灰白っぽい感じでした。
距離を置いて、近づいては来ませんでした。
明神平では、声が尋常ではないと思いました。
距離が近く、ガスを利用して動いている感じがしました。
遠吠えは、初めは低く、後は音程が高くなりますが、そのような感じでした。
ただならない感覚が襲ってきて、ぞくぞくしました。
H,yagi2016/09/19 15:16
有り難うございます。
吉田さん的に記するなら-hiroshi1949-となりますが、
私が最初にオオカミ体験をしたのは1969年7月29日で、山小屋の番人をしていた新潟・長野県境の苗場山での事です。
1996年10/14に撮影した秩父野犬
もう20年前の事になってしまった
1996年10月14日、二ホンオオカミのタイプ標本そっくりの動物の写真を撮り、その後も奥秩父山中で…と思われる咆哮を幾度か聴き…オオカミ探しの人生を50年近く送っています。
山小屋生活時代の私
1968年5月、苗場山頂にて
此の度は、お手を煩わせまして申し訳有りませんでした。「野の学舎」のタイトル写真・蝶が岳での写真・2点を、10/7UPのブログにて使わせて頂きます。
宜しくお願いします。】
*『ともかく具体的に動いてみるんだね。具体的に動けば具体的な答えが出るから』“相田みつを”の言葉どおりでした。
ニホンオオカミは生存しているか・絶滅しているか…云々を語る前に、兎も角山に入ってみる事だと思うのです。